聖書のことば 二テサロニケ2:3-5

 この者は、すべて神と呼ばれたり拝まれたりするものに反抗して、傲慢にふるまい、ついには神殿に座り込み、自分こそは神であると宣言するのです。
              (二テサロニケ2:4)

 パウロがこの箇所を記すに際して参照したと思われる重要な箇所は、旧約聖書のダニエル書11章36節です。そこでは、ダニエルに終わりの時についての啓示が与えられ、終わりの時までにどのようなことが起こるかということが示されています。「あの王はほしいままにふるまい、いよいよ驕り高ぶって、どのような神よりも自分を高い者と考える。すべての神にまさる神に向かって恐るべきことを口にし、怒りの時が終わるまで栄え続ける」とあります。「あの王」とは直接には具体的な一人の人物を指していると考えられます。それはセレウコス朝シリアの第8代目の王であるアンティオコス4世エピファネス(在位B.C.175-164年)のことでありましょう。セレウコス朝シリアとはアレクサンドロス大王の帝国が分裂してできた王国のうちの一つです。アンティオコス4世エピファネスはエジプトを征服しようとして失敗すると、その遠征の帰りにエルサレムに侵入し、エルサレムをギリシア風の都市に改造して旧約聖書に基づくユダヤ教の儀式を禁止し、エルサレム神殿でギリシア神話のゼウス神を礼拝させようとした暴君でした。

 ダニエル書の預言は部分的にはこのアンティオコス4世エピファネスによって実現したと言えます。しかし、旧約聖書の預言は最終的にはキリストの再臨によって完全に成就されるものです。ですから、キリストも終わりの日の前兆についての教えの中で「預言者ダニエルの言った憎むべき破壊者が、聖なる場所に立つのを見たら」(マタイ24:15)と言っておられます。つまり、終わりの日が来る前にダニエルの預言が成就し、「憎むべき破壊者が、聖なる場所に立つ」ということです。パウロもダニエル書の預言やキリストの御言に基づいて、終わりの日の前に「不法の者」が「すべて神と呼ばれたり拝まれたりするものに反抗して、傲慢にふるまい、ついには神殿に座り込み、自分こそは神であると宣言する」のだと教えているのです。 (3月5日の説教より)