ルカ3:18-20「洗礼者ヨハネの受難」

領主ヘロデは、自分の兄弟の妻ヘロディアとのことについて、また、自分の行ったあらゆる悪事について、ヨハネに責められた  (ルカ3:19)

ガリラヤの領主ヘロデは、ベツレヘムの幼な子たちを殺害したヘロデ大王とマルタケという女性の間に生まれた子どもで、ヘロデ・アンティパスと呼ばれます。ヘロデ大王は多くの妻をもっていたため、母親の違う子どもたちがたくさんいました。ヘロデ大王とマリアンメ2世という女性の間に生まれた子どもであるヘロデ・フィリポは、ヘロディアという女性と結婚しました。そして、このヘロデ・フィリポとヘロディアの間には、サロメという娘が生まれます。サロメはマルコによる福音書の6章25節で、ヘロデ・アンティパスから欲しいものを何でもやろうと言われて「洗礼者ヨハネの首を」と言う娘であります。

ヘロデ・フィリポは、政治的な力がなかったため、妻のヘロディアを満足させることができませんでした。妻のヘロディアは権力欲の強い人物であったため、この最初の夫の元を去り、ヘロデ・フィリポのいわゆる腹違いの兄弟であるガリラヤの領主ヘロデ・アンティパス、すなわち本日の聖書の箇所に登場するヘロデを口説いて、アンティパスにその妻を離縁させました。そして、その代わりに自分がアンティパスの妻となりました。このような、権力欲に動かされた離婚と結婚が、聖書の教える結婚のあり方とかけ離れているのは言うまでもありません。創世記の2章24節に「男は父母を離れて女と結ばれ、二人は一体となる」とありますように、結婚は神様が結び合わせてくださった関係として重んじられなければなりません。また、旧約聖書のレビ記18章16節には「兄弟の妻を犯してはならない。兄弟を辱めることになるからである」とあります。申命記の25章5節から10節で定められているように、兄が死んでその妻が子どものないまま残された場合、弟が兄の妻であった女性と結婚するというような特別の場合を除いて、聖書は兄弟の妻と男女の関係をもつことを禁じています。洗礼者ヨハネは、神様から遣わされた預言者として、人々の考え方や生活に大きな影響及ぼす領主ヘロデ・アンティパスとその妻のヘロディアの不品行を黙って見ていることはできませんでした。そして、ヘロディアとヘロデ・アンティパスの結婚は正しくないと公に指摘して、彼らに悔い改めを求めたのでありました。  (1月31日の説教より)