わたしたちには、他の使徒たちや主の兄弟たちやケファのように、信者である妻を連れて歩く権利がないのですか。 (一コリント9:5)
この箇所は、当時の使徒たちがどのような生活をしていたかを示しています。すなわち、新約聖書の時代の使徒たちは「信者である妻を連れて歩く」生活をしていたということです。言い換えれば、使徒たちは妻を伴って旅をして各地でキリストの福音を宣べ伝えていたということです。これは、新約聖書の時代の使徒たちが結婚をしていたということを明らかに示しています。そして、それだけではなく、家族を支えるために教会から報酬を受けていたということをも表しています。しかも、使徒たちのごく一部がそうであったいうことではなく、「他の使徒たちや主の兄弟たちやケファのように」とありますように、多くの使徒たちが結婚して教会から報酬を受けて家族を養っていたということです。
「他の使徒たち」はパウロ以外の使徒たちということですから、復活のキリストに出会ったパウロ以外の人々のことでしょう。また、「主の兄弟たち」とは、マリヤとヨセフの間に生まれてイエス・キリストの肉親として育ち、キリストを信じて使徒となった人たちのことです。マルコによる福音書6章3節には、イエス・キリストの肉親として、ヤコブ、ヨセ、ユダ、シモンという四人の兄弟がいたということが記されています。「主の兄弟たち」の中の代表的な人物として、エルサレム教会の指導者であった「主の兄弟ヤコブ」がいました(一コリント15:7、使徒15:13参照)。「ケファ」はパウロと共に使徒たちの代表格であったペトロのことです。他の使徒たちの中でペトロだけが名前を挙げられているのは、おそらくペトロが十二使徒の中でも代表格で、当時のキリスト教会全体で重んじられていたからでありましょう。この手紙の1章12節によれば、コリント教会には「わたしはケファにつく」と主張する信徒たちがいたということですから、もしかするとペトロはその妻と共にコリントを訪問したことがあったのかもしれません。そして、パウロの権威を否定する信徒たちは、パウロとペトロを比較して考えていた可能性もあります。
(10月28日の説教より)