ルカによる福音書11:45-54
「こうして、天地創造の時から流されたすべての預言者の血について、今の時代の者たちが責任を問われることになる。それは、アベルの血から、祭壇と聖所の間で殺されたゼカルヤの血にまで及ぶ。」 (ルカ11:50-51)
「アベルの血」とは、アダムとエバの子アベルが兄のカインによって殺された創世記4章に記されている殺人事件のことです。それでは、「ゼカルヤの血」とは何のことでしょうか?これは、ソロモン王の死んだ後に、イスラエル王国が南北に分裂してできた二つの国のうち、南のユダ王国で起こった事件のことです。
紀元前の9世紀、ユダ王国の王ヨアシュ(前840-801年在位)の時代にゼカルヤという預言者がいました。この人が殺されたことは、旧約聖書の歴代誌下の24章に記されています。ヨアシュは7歳の子どもの時に王の位に着きました。彼が王位に着く前に、ユダ王国はアタルヤというヨアシュの祖母にあたる女性によって支配されていました。アタルヤは残忍な人で、将来自分の権力を妨げる恐れのある孫のヨアシュを殺そうとしました。しかし、信心深い祭司ヨヤダとその妻ヨシェバが幼いヨアシュをかくまい、ヨアシュの命を守りました。その後、祭司ヨヤダは暴力的に国を支配していたアタルヤを追い払い、ヨアシュを王の位につけてヨアシュの後見人として彼を支えたのち、高齢になって死にました。
ところが、祭司ヨヤダの死後、ヨアシュ王は時代の風潮に染まって神様に対する正しい信仰を失い、偶像礼拝をするようになりました。そこで、祭司ヨヤダの子であるゼカルヤは、神様の御言葉を取り継いで「なぜあなたたちは主の戒めを破るのか。あなたたちは栄えない。あなたたちが主を捨てたから、主もあなたたちを捨てる」(歴代下24:20)と警告をしました。ところが、ヨアシュ王は、命の恩人の祭司ヨヤダの子であるゼカルヤの警告を聞いて悔い改めるどころか、ゼカルヤを神殿の庭で石打ちの刑で殺してしまいました。残酷な石打ちの刑にされたゼカルヤは「主がこれを御覧になり、責任を追及してくださいますように」(歴代下24:22)と語って死にました。そのことを受けて、キリストは51節の終わりのところで「そうだ。言っておくが、今の時代の者たちはその責任を問われる」と語っておられるのです。 (8月10日の説教より)