マタイによる福音書25:14-30
「しかし、一タラントン預かった者は、出て行って穴を掘り、主人の金を隠しておいた。」 (マタイ25:18)
神様から託されたタラントには、人によってその額が大きい小さいの違いがあります。5タラント託される人もあれば、2タラント託される人もあります。小説『タラント』の中でジャーナリストとして活躍する宮原玲は、5タラント託された人かもしれません。若くして神様のみもとに召されるムーミンこと甲斐睦美は、2タラント託された人かもしれません。聖書のたとえ話を注意深く読むと気づかされるのは、5タラント託された人は5タラントもうけ、2タラント託された人は2タラントもうけています。もうけた額には差がありますが、託された金額との比率で考えればどちらも元本の100%という大きなもうけなのです。
それでは、1タラント託された人は、1タラントもうけたでしょうか?いいえ、1タラントを活かさないで、土の中に埋めてしまいました。活かそうとして失敗するのが怖かったのでしょう。そして、最後に主人から厳しい裁きを受けます。この裁きは、キリスト教で言う最後の審判を表しています。つまり、この世の終わりに、人はどのように生きたかによって父なる神様とキリストによって裁かれるという最後の審判です。5タラント託された人と2タラント託された人は、主人から「お前は少しのものに忠実であったから、多くのものを管理させよう」と言っていただきました。「多くのもの」とは、きっと永遠の命のことを指しているのでしょう。ところが、1タラントを託されて土の中に埋めておいた人は「さあ、そのタラントンをこの男から取り上げて、十タラントン持っている者に与えよ」という主人の厳しい裁きを受けました。これは永遠の滅びを意味しています。
小説の『タラント』の主人公の多田みのりは、1タラントを託された人でした。そして、それを活かして用いようとして、失敗し挫折しました。そのため、もうこれからは意味のあることや人の役に立つことをするのは一切やめようと思って、1タラントを土の中に埋めてしまったのです。ところが、不思議にももう一度、1タラントを活かして用いてみようと考えるようになりました。新しい使命に気づいたのです。そして、土の中から1タラントを掘り出し始めました。なぜなら、1タラントには1タラントの用い方がある、ということに気づいたからです。人生に挫折して、長いトンネルのような時期をすごすことによって、人は自分に託された、小さいけれども本当の使命に気づくことができます。そして、そのとき自分には小さいけれども本当の賜物が託されている、ということにも気づくことができます。ですから、挫折を恐れないで小さな使命に出会うまで進んでいきたいものです。神様は私たちを小さな使命に出会うまで導いてくださいます。 (7月31日の説教より)