ヨハネによる福音書14:1-3
「わたしの父の家には住む所がたくさんある。もしなければ、あなたがたのために場所を用意しに行くと言ったであろうか」 (ヨハネ14:2)
「わたしの父の家」とは父なる神様のおられる天のことです。ですから、「わたしの父の家には住む所がたくさんある」とは、キリストを信じる者たちに天の住まいがあるということを約束してくださった言葉です。分かりやすく言えば、キリストを信じる者たちには天国があるということです。これはなんと大きな慰めでしょうか。
「もしなければ、あなたがたのために場所を用意しに行くと言ったであろうか」とありますが、キリストはいつ弟子たちに「あなたがたのために場所を用意しに行く」とおっしゃったのでしょうか?ヨハネによる福音書を丁寧に読みましても、本日の箇所より前のところでキリストが弟子たちに「あなたがたのために場所を用意しに行く」とおっしゃった箇所は見当たらないのです。12章32節には「わたしは地上から上げられるとき、すべての人を自分のもとへ引き寄せよう」というキリストの言葉があります。この言葉を拡大して解釈すれば「あなたがたのために場所を用意しに行く」と取ることもできなくはありません。しかし、はっきりと「あなたがたのために場所を用意しに行く」とおっしゃったわけではありません。そこで、この2節の後半の箇所については別の翻訳の仕方もなされています。それは、「もしなければ、私はそう言っておいたであろう。あなたがたのために場所を用意しに行くのだ」という翻訳です。約2年前に日本聖書協会から出版された新しい翻訳は、そうなっています。実はこの翻訳の仕方は最近になって考えられたものではなく、古くからあるものなのです。400年以上前に出版され、英語の聖書の中で最も伝統的な翻訳と言われるKing James Version でもそのように翻訳されているのです。すなわち、“if it were not so, I would have told you. I go to prepare a place for you.”とあります。ギリシア語の原典はどちらにも翻訳することができるのですが、わたくしは、「もしなければ、私はそう言っておいたであろう。あなたがたのために場所を用意しに行くのだ」とする方が、次の3節の「行ってあなたがたのために場所を用意したら、戻って来て、あなたがたをわたしのもとに迎える」という言葉にスムーズに続くと思います。
(11月22日の説教より)