コリントの信徒への手紙一16:1-4

聖なる者たちのための募金については、わたしがガラテヤの諸教会に指示したように、あなたがたも実行しなさい。
(一コリント16:1)

「聖なる者たち」というのは、キリストに召されたクリスチャンたちのことですが、この場合はエルサレム教会のクリスチャンたちのことを指しています。
エルサレムの教会は世界で最初に誕生したキリスト教会ですが、その信徒たちには貧しい人々が多くいました。たとえば、使徒言行録6章を読みますと、エルサレムの教会にはやもめ、すなわち夫を失った女性たちが多くいて、教会から生活の援助を受けていた、ということがわかります。また、使徒言行録8章1節には「エルサレムの教会に対して大迫害が起こり、使徒たちのほかは皆、ユダヤとサマリアの地方に散って行った」とあります。迫害のためにエルサレムを離れた信徒たちの中にはやもめたちへの支援を財政的に支えていた人々もいたことでしょう。迫害によってエルサレム教会自身の財政的な力が弱っていたに違いありません。
さらに、使徒言行録11章28節と29節には「その中の一人のアガボという者が立って、大飢饉が世界中に起こると“霊”によって予告したが、果たしてそれはクラウディウス帝の時に起こった。そこで、弟子たちはそれぞれの力に応じて、ユダヤに住む兄弟たちに援助の品を送ることに決めた」とあります。「ユダヤに住む兄弟たち」とは当然ユダヤの都であるエルサレム教会の信徒たちを含みます。大飢饉のためにエルサレム教会の信徒たちがますます貧しくなったので、バルナバとパウロによって指導されていたアンティオキア教会が、その支援を始めたのでした。
エルサレム教会の信徒たちへの支援の輪は、ほかの諸教会にもさらに広がっていきました。パウロは、この手紙をアジア州の州都であるエフェソで書いていたと考えられますが、エフェソに行く前にガラテヤの諸教会を訪問していました。使徒言行録の18章23節に「ガラテヤやフリギアの地方を次々に巡回し、すべての弟子たちを力づけた」とあるとおりです。そのガラテヤ訪問のおりに、エルサレム教会の信徒たちを支援するための献金を呼びかけたのでしょう。
(6月28日の説教より)