聖書の言葉 テサロニケの信徒への手紙二3:3-5
どうか、主が、あなたがたに神の愛とキリストの忍耐とを深く悟らせてくださるように。 (二テサロニケ3:5)
以前用いておりました口語訳聖書で同じ箇所を読んでみますと、「どうか、主があなたがたの心を導いて、神の愛とキリストの忍耐とを持たせてくださるように」となっておりまして、かなり受ける印象が違います。現在私たちの用いております新共同訳聖書の「深く悟らせてくださるように」というのは、意味を分かりやすく表現した意訳です。ギリシア語原典の元の言葉を比較的よく表しているのは口語訳の方ですが、口語訳の「神の愛とキリストの忍耐とを持たせてくださるように」の「持たせてくださるように」も原典にはない言葉で、実はこれも意訳です。むしろ、この箇所について原典の意味をより忠実に伝えていますのは、英語の聖書であります。たとえば、New International Version(2011)によれば“May the Lord direct your heart into God’s love and Christ’s perseverance”となっています。すなわち、「主があなたがたの心に神の愛とキリストの忍耐への道を教えてくださるように」ということです。
私たち人間の心は迷いやすいものです。キリストご自身に道を教えていただかなければ、神の愛とキリストの忍耐へと至ることはできません。また、たとえ一度神の愛とキリストの忍耐を知った人であっても、何度も繰り返しその原点に立ち帰る道を教えていただく必要があります。そうでなければ、いつの間にか神の愛とキリストの忍耐から心が離れてしまうでしょう。そのように迷いやすい私たちの心に、主イエス・キリストご自身が聖霊によって語りかけ、神の愛とキリストの忍耐へと立ち帰るように促してくださるのです。パウロは、テサロニケの信徒たちも絶えず神の愛とキリストの忍耐という信仰の原点に立ち帰ることができるように、キリストの導きを祈っているのであります。 (5月7日の説教より)