ルカによる福音書21:5-11
「あなたがたはこれらの物に見とれているが、一つの石も崩されずに他の石の上に残ることのない日が来る。」
(ルカ21:6)
このキリストの御言葉は、第一に、エルサレムの神殿が徹底的に破壊されて瓦礫となる日が来ることを告げています。そして第二に、エルサレム神殿の崩壊によって象徴されるように、この世界が審判される日が来ることを告げています。つまり、最後の審判の予告であります。キリストが単にエルサレム神殿の崩壊のことだけを考えておられたのではなかったということは、9節のところで「こういうことがまず起こるに決まっているが、世の終わりはすぐには来ない」と言って、「世の終わり」について語っておられることからも明らかであります。
キリストの神殿崩壊の預言を聞いていた人々は「先生、では、そのことはいつ起こるのですか。また、そのことが起こるときには、どんな徴があるのですか」(7節)と尋ねました。この質問の「そのこと」というのも、神殿の崩壊と最後の審判の両方を指していると考えられます。細かなことですが、「そのこと」と訳されているギリシャ語のタウタという言葉は、正確に言えば「これらのこと」という複数の意味です。そこで、最近の英語の聖書は、より原文に忠実に“when will these things be?”つまり「これらのことは、いつあるのでしょうか?」と翻訳しています(ESV)。確かに、「これらのこと」と複数で翻訳した方が、これから議論するのが、単にエルサレム神殿の崩壊だけではなく、最後の審判をも指していることが明らかになります。エルサレム神殿の崩壊、世の終わり、最後の審判、これらの出来事は一体いつ起こるのか、ということは極めて重大な問題です。ですから、人々はこれらの出来事の前触れとなるしるしは何ですか?と尋ねずにはおれなかったのでしょう。
ところが、キリストはこれに対して「惑わされないように気をつけなさい」(8節)と警告されました。人々は世の終わりのしるしは何であるか知りたいと躍起になっていました。しかし、キリストは逆に「世の終わりはすぐには来ない」(9節)ということを示す例を列挙されました。つまり、これらのことが起これば世の終わりが来た、と普通の人々は思うかもしれないが、そうではないのだから、あなたたちは惑わされないように気をつけなさい、と教えられたのであります。 (11月29日の説教より)