聖書のことば  コリントの信徒への手紙一1:10-12

さて、兄弟たち、わたしたちの主イエス・キリストの名によってあなたがたに勧告します。皆、勝手なことを言わず、仲たがいせず、心を一つにし思いを一つにして、固く結び合いなさい。
わたしの兄弟たち、実はあなたがたの間に争いがあると、クロエの家の人たちから知らされました。
あなたがたはめいめい、「わたしはパウロにつく」「わたしはアポロに」「わたしはケファに」「わたしはキリストに」などと言い合っているとのことです。

 コリント教会の信徒たちが「わたしはアポロに」と言っていたアポロとはどのような人物だったのでしょうか。使徒言行録18章24-28節によれば、アポロは「アレクサンドリア生まれのユダヤ人」で、「聖書に詳しい」「雄弁家」でありました。そして、エフェソでプリスキラとアキラの教えを受けたアポロは、彼らの推薦を得てアカイア州のコリントに行き、コリント教会で伝道をしました。アポロの特長は、旧約聖書の知識が豊かで雄弁にイエス・キリストを証しすることができたということです。すなわち、彼は「聖書に基づいて、メシアはイエスであると公然と立証し、激しい語調でユダヤ人たちを説き伏せ」ました。そして、そうすることによって「既に恵みによって信じていた人々を大いに助けた」のでありました。そのような力強い働きをしたアポロがコリント教会で人望を集めたとしても不思議ではありません。
 しかし、アポロ自身には人々を自分のもとに集めようとする意図はなかったことでしょう。パウロはアポロのことを自分と同じように「主がお与えになった分に応じて仕えた者」(一コリント3:5)と言って高く評価しています。もし、アポロに自分の派閥を作るような意図があれば、そうは言わなかったでしょう。ですから、「わたしはアポロに」と言っていた人々も「わたしはパウロにつく」と言っていた人々と同じように、アポロ自身の意思とは無関係に自分の思い込みでそのように言っていたに違いありません。すなわち、アポロの知識や雄弁を人間的な思いで受け止めて、それを過大に評価し「わたしはアポロに」と言っていたのでしょう。そして、アポロにつく自分を誇っていたのでしょう。「わたしはパウロにつく」とか「わたしはアポロに」などと主張して争っていた人々は、パウロやアポロなどの意思とは無関係にそれらの名前を自己主張のために利用して、私はそのような偉い人についているのだから優れたクリスチャンなのだと主張して自分を誇っていたのだと考えられます。    (7月16日の説教より)