エフェソの信徒への手紙6:1-4

「父と母を敬いなさい。」これは約束を伴う最初の掟です。 「そうすれば、あなたは幸福になり、地上で長く生きることができる」という約束です。         (エフェソ6:2-3)

 

出エジプト記の20章12節には「あなたの父母を敬え」という戒めだけではなく、「そうすればあなたは、あなたの神、主が与えられる土地に長く生きることができる」というように、この戒めを守るとどうなるかという約束が教えられています。「あなたの神、主が与えられる土地」とは、旧約聖書の時代のイスラエルの人々がエジプトの奴隷状態から解放されたのちに神様から与えられたカナンの土地のことです。旧約聖書の時代のイスラエルの人々は、奴隷ではなく自由な人間として生きるようにカナンの土地を与えられたのでした。ですから、「あなたの神、主が与えられる土地に長く生きることができる」とは、一人一人が長く生きることができるということだけではなく、イスラエルという共同体がカナンの土地で長く存続することができるということを意味していたのでしょう。考えてみますと、父母が神様の教えを守って神様の教えを子どもに正しく教え、しかも子どもが父母を神様の教えを教えてくれる人として敬っているならば、子どもも神様の教えを守る人になることでしょう。そうすると、イスラエルという共同体は神様の教えを守る共同体になり、カナンの土地で長く存続することができるでしょう。ところが、古代のイスラエルの歴史では、イスラエルという共同体は神様の教えを守らなくなり、神様の裁きによって国としては滅んでしまったのでした。

2節の後半の「これは約束を伴う最初の掟です」というのは、この掟を守るとどうなるかという約束が伴っているという意味です。そして、3節ではその約束が「そうすれば、あなたは幸福になり、地上で長く生きることができる」と引用されています。この3節の言葉は、出エジプト記20章12節の「そうすればあなたは、あなたの神、主が与えられる土地に長く生きることができる」とはかなり違っています。第一に、「あなたは幸福になり」という言葉が付け加えられています。これは、ギリシア語版の旧約聖書にはこの言葉があり、パウロはギリシア語版の旧約聖書から引用しているためです。そのため、ヘブライ語版の旧約聖書の日本語訳とは違っているのです。第二に「あなたの神、主が与えられる」という言葉が省略されています。これは、旧約聖書ではカナンの「土地」という意味に限定されていたものを、すべての人に当てはまる「地上」という意味に変えるために、パウロが「あなたの神、主が与えられる」という言葉をあえて省略したのです。そうすることによって、パウロは「父と母を敬いなさい」という教えに従えば、新約聖書の時代のクリスチャンにとってこのような祝福があります、ということを教えているのです。    (4月19日の説教より)