エフェソの信徒への手紙4:22-24

だから、以前のような生き方をして情欲に迷わされ、滅びに向かっている古い人を脱ぎ捨て、心の底から新たにされて、神にかたどって造られた新しい人を身に着け、真理に基づいた正しく清い生活を送るようにしなければなりません。

          (エフェソ4:22-24)

 

パウロは、この箇所で、信徒たちに古い自我を脱ぎ捨てて聖霊による新しい人格を身につけるように勧めています。「脱ぎ捨て」と「身につけ」は着るもののたとえに基づいた表現です。ある聖書の研究者は、古代のローマ帝国において若者が成人になる儀式でローマ市民であることを表すトーガ・ウィーリリスという衣装を着たことが、このたとえの背景にあるのではないかと考えています。この成人の儀式によって、若者は自由なローマ市民として新しく生きることが認められました。パウロは、クリスチャンが古い自我の衣装を脱ぎ捨てて、キリストの霊によって形づくられた新しい人格の衣装を着ることによって、神様の見ておられる前で自由なクリスチャンとして生きるように勧めているのでしょう。

クリスチャンであっても古い自我はしぶとく心の中に残っています。そして、古い自我は絶えず心の表に出てきて、言葉や行いになって現れます。しかし、そのような古い自我が表に出てきたときに、クリスチャンはそれを一枚ずつ脱ぎ捨てて、キリストの霊によって与えられた新しい考えや言葉や行いを身に着けて生きることができるのです。ですから、感情が高ぶって古い自我が自分の表に出てきそうなときは、静まる時をもってそれを脱ぎ捨てるようにしましょう。そして、祈って聖霊の導きをいただいて、新しい人格の衣装を身にまとって考え発言し行動するようにいたしましょう。

パウロは聖霊によって与えられる新しい人格を「神にかたどって造られた新しい人」と呼んでいます。旧約聖書の創世記の1章26節と27節によれば、人間は神様にかたどって造られました。つまり、神様の御心がわかって、神様の御心に従って生きていくことのできる心をもつように造られたということです。ところが、人間の先祖であるアダムとエバが神様に反抗したために、人間の心は神様の御心がわからなくなり、神様の御心に逆らうようになってしまいました。しかし、神様の独り子であるイエス・キリストを信じ、キリストの霊である聖霊をいただくときに、「神にかたどって造られた新しい人」が人間の心の中に造られていきます。そして、神様の御心がわかって、神様の御心に従って生きていくことのできるように、新しくされていくのです。         (9月28日の説教より)