ルカによる福音書7:18-23

「目の見えない人は見え、足の不自由な人は歩き、重い皮膚病を患っている人は清くなり、耳の聞こえない人は聞こえ、死者は生き返り、貧しい人は福音を告げ知らされている。」      (ルカ7:22)

 

これらのことは、旧約聖書で神の救いが来たときに実現することとして預言されていました。その預言されていたことが今実現しているのだ、ということを示すことによって、イエス・キリストはご自身が「来るべき方」すなわちメシアであるということを証ししておられるのであります。目の見えない人が見えるようになり、耳の聞こえない人が聞こえるようになり、足の不自由な人が歩けるようになるということについては、イザヤ書35章5節と6節に預言されています。また、死者が生き返るということについては、イザヤ書26章19節で預言されています。さらに、貧しい人が福音を告げ知らされていることについては、イザヤ書61章1節で預言されています。

これらの箇所を読みますと、イエス・キリストの働きが、旧約聖書に預言されていたことを実現しているということがよくわかります。そもそも、これらの預言は、終わりの日の「来るべき世」において起こることを預言したものです。終わりの日に起こることを預言したものですから、キリスト教神学の言葉では終末論的預言といいます。その「来るべき世」において起こることは、まずイエス・キリストに出会って信じた人々に起こります。「来るべき世」とは「来るべき方」であるメシアの支配される世であります。そして、イエス・キリストと出会い、イエス・キリストを信じる人は、この世にあってすでに「来るべき方」の支配を受け入れています。「来たるべき方」の支配を受け入れているということは、すでに「来るべき世」に属しているということです。ですから、イエス・キリストを信じる人は、この世にあってすでに部分的には「来るべき世」の命である永遠の命を受けているのであります。

宗教改革者のカルヴァンは、旧約聖書が単に地上のイスラエル王国の繁栄を約束していただけではなく、霊的で永遠のことがらである「来るべき世」の命をも約束していたということを強調しています(『キリスト教綱要』2篇10章)イエス・キリストを信じる人は「来るべき世」の命をこの世にいるときに受け始めます。その結果、先ほどお読みしました旧約聖書に預言されているような超自然的な出来事がイエス・キリストを信じる人に起こるのであります。      (8月29日の説教より)