ルカによる福音書21:20-24

「人々は剣の刃に倒れ、捕虜となってあらゆる国に連れて行かれる。異邦人の時代が完了するまで、エルサレムは異邦人に踏み荒らされる。」        (ルカ21:24)

このキリストの御言葉によれば、ユダヤ人の苦難は「異邦人の時代が完了するまで」という期限があると言うのです。それでは、「異邦人の時代が完了するまで」とはどういうことでしょうか。使徒パウロが記したローマの信徒への手紙の11章25節と26節には、ローマの異邦人クリスチャンにあてた次のような言葉があります。「兄弟たち、自分を賢い者とうぬぼれないように、次のような秘められた計画をぜひ知ってもらいたい。すなわち、一部のイスラエル人がかたくなになったのは、異邦人全体が救いに達するまでであり、こうして全イスラエルが救われるということです。」
これは次のような意味をもっています。イスラエル人すなわちユダヤ人は、神が遣わされた独り子であるイエス・キリストを拒否してかたくなになり、高慢になりました。そして、神の裁きを自分の身に招くことになりました。ところが、ユダヤ人がキリストを拒否したことによって、キリストの救いの教えは、異邦人と呼ばれるユダヤ人以外の人々に宣べ伝えられるようになりました。そして、キリストの福音は広く世界中に宣べ伝えられました。最終的には、異邦人全体にキリストの福音が宣べ伝えられたならば、かつては神に逆らったイスラエルもキリストの福音を信じて救われるようになるであろう、ということです。すなわち、ユダヤ人の神への反逆とそれに対する審判には、異邦人が救われるまでという期限があるということです。
このことは、私たち新約聖書を読む者に、確かな歴史の展望を与えてくれます。すなわち、まずユダヤ人に対する神の審判が下ります。そのことは、紀元1世紀にユダヤ人がキリストを拒否するということと、エルサレムの都が破壊されるという形で現れました。次に、世界の異邦人に福音が宣べ伝えられていきます。異邦人がキリストを信じ、キリストの福音によって救われます。これは、紀元1世紀のエルサレムから始まり、21世紀の現在も世界の各地で進んでいる出来事です。そして、すべての異邦人に福音が宣べ伝えられた後、ユダヤ人もまたキリストを受け入れて悔い改める日がやってきます。さらに最後には、キリストが全世界の人々に最後の審判を行うために再び来られるということです。
(12月13日の説教より)